2008年世界禁煙デーの解説

尾崎米厚((取大学医学部環境予防医学分野准教授)

 多くの喫煙者は未成年のうちに喫煙を開始している。タバコ会社が「未成年者に販売する気は毛頭ありません」といったところで、新たな喫煙者を囲い込まないと将来の売り上げが落ちるのは目に見えているので、明らかにポーズである。若年者は、販売促進や広告など、タバコに興味を持たせるような環境にもっとも敏感に反応する。このような影響を与えるような環境を減らすととともに、環境に誘惑されない子どもたちを育てることが重要である。

 未成年者のうちから喫煙を開始することがいかに健康によくなくて様々な問題と関係していること、喫煙対策はどうあるべきか、など未成年者の喫煙対策のついての様々な角度からの総説は、保健医療科学の54巻4号(2005年)をごらんいただきたい。国立保健医療科学院のホームページからも閲覧できる(http://www.niph.go.jp/toshokan/hoken54.htm#04)。

 今すぐにでも必要なのは、未成年者がタバコに興味を持つような販売促進を中止させることであるが、現状では、それとは程遠い実態にある。このような現状を打破する方法として、世界禁煙デーのメッセージには、政治家への働きかけ、青少年への働きかけ(青少年自身が国に提案し、会社に反対するように)、NGOへの呼びかけ、社会全体への訴えがあげられている。わが国では、そのすべてが弱いので、いずれも強化する必要があるが、さらに付け加えるとすれば、マスコミを活用した社会規範の誘導であろう。わが国の昨今の政治状況は、マスコミを介した世論の動きに敏感で、以前には考えられなかったほど短期に政策が変更される場合が散見されるようになった。この動力学を活用して、社会変革を起こすことができれば、多くの将来の健康被害を減らすことができるかもしれない。

 多くの先進国では、未成年者も含めて喫煙率が低下してきた。人口増加の鈍化もあり、タバコ会社はその売り上げの損失を、開発途上国での売り上げ増加で補おうとしている。私たちは、自国内の取り組みとともに、開発途上国での状況を把握して、対策の推進を支援していかなければならない。



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