日本禁煙推進医師歯科医師連盟では、学術発表と会員の情報交換の場として年1回学術総会 を開催しております。皆様のご参加をお待ちしております。日時等は改めてお知らせ致します。




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受動喫煙

 

1,G Howard et al. Cigarette smoking and progression of atherosclerosis.
The atherosclerosis risk in community (ARIC) study. JAMA 279:119-124,1998.

 

喫煙と受動喫煙の動脈硬化進展への影響を検討した。10914人の参加者に頸動脈エコー検査で内皮中膜厚を測定して3年間の変化を追跡した。結果は性年齢、危険因子、生活因子で補正した。受動喫煙ありを以後、受動と略。内皮中膜が3年間で増大した厚さは、喫煙したことない+受動(-)=25、喫煙したことない+受動(+)=31、喫煙歴あり+受動(-)=32、喫煙歴+受動(+)=38、喫煙者=43マイクロmで、喫煙、受動喫煙で有意に増大した。これらの結果は喫煙と受動喫煙の害と、喫煙の動脈硬化に対する可逆的、累積的効果を示した。

2, 受動喫煙がアテローム性動脈硬化を加速   メディカルトリビューン 17 Apr 1998
ウェイク・フォレスト大学Bowman Gray校(ノースカロライナ州ウィンストンセイラム)公衆衛生学のGeorge Howard博士らは喫煙および受動喫煙と血管障害に関する大規模研究を実施し,『Journal of the American Medical Association』(JAMA,279:119-124)で「喫煙および受動喫煙は累積的かつ不可逆的に血管を損傷し,心筋梗塞や脳卒中を招く恐れがある」とする初の報告を行った。公衆衛生学の専門家らはこれを受けて「心血管疾患(CVD)リスクの総体的な評価には,患者に受動喫煙の有無をルーチンに確認し,また受動喫煙の低減を促進すべきだ」と主張した

1時間/週の受動喫煙でも影響

 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校(ニューヨーク州ストーニーブルック)精神医学のSheila B. Blume臨床教授は「この領域で研究が行われていることは喜ばしい。1962年に私がこの分野に着手したとき,嗜癖のメカニズムは全くわかっていなかっ た。しかし,今では現代的神経科学の手法によって,嗜癖性を有する物質は,脳の,おそらくある特定の部分に至る共通の最終経路を有することがわかってい る。その特定の部分とは,食物や飲料水の獲得のような生命維持に必要で,ある種の喜びを得られる行動を,われわれに確実に反復させるために自然がつくり出 した(発生した)部分である。ニコチンのような物質も脳内のこの領域を刺激する」と述べた。
 Eissenberg氏は「このトピックについては今後,さらに研究を続ける必要がある。貼付薬,ガム,スプレー,吸入剤などのニコチン補充製剤が普及 することを期待する」と述べ,「最善の禁煙支援法を研究するうえで取り組むべきもう 1 つの重要な領域は,喫煙再開の予防である」と強調した。

 

2, ライフスタイルの変革を望む人々にカウンセリングを
禁煙には医師の協力が必要
メディカルトリビューン[1999年2月25日 (VOL.32 NO.8) p.16]
禁煙指導の専門医らは「たばこをやめたいと願う米国人は抗うつ薬amfebutamone(Zyban,Glaxo Wellcome社)やニコチンの代用品を用いれば禁煙は簡単にできると思っているが,医師から行動様式に関してカウンセリングを受けないと多くの場合, 挫折することになる」と発表した。

儀式として生活に浸透

 Howard博士らが喫煙者および非喫煙者 1 万914例を対象に 3 年間にわたって調査を行った結果,喫煙者の頸動脈のアテローム性動脈硬化は喫煙経験を有しない者より50%進行していた。
 超音波検査による測定で,喫煙群の頸動脈内膜・中膜の厚さが平均43.0μm増加していたのに対し,喫煙経験を有しない群での増加は28.7μmだった。過去に喫煙経験を有する群では,頸動脈のアテローム性動脈硬化が喫煙経験が全くない群より25%進行していた。また,定期的受動喫煙群は非受動喫煙群より20%進行していた。今回の研究における受動喫煙者の定義は,1 週間に 1 時間以上喫煙者に接する者とした。
 同博士は「CVDを予防するためには,受動喫煙の回避に禁煙推進と同等の力を注ぐべきであり,これは糖尿病や高血圧などのCVDリスクファクター保有者およびCVD患者では特に重要である」と述べた。
 米国心臓協会(AHA)によると,17歳以上の米国人の約半数が自宅または職場での受動喫煙者であるという。

受動喫煙の 危険を両親に

 ロチェスター大学(ニューヨーク州ロチェスター)地域予防医学のRachel M. Werner博士とThomas A. Pearson博士は付随論評で,「受動喫煙に関して真に受動的かつ消極的なのはわれわれ自身の対応である。受動喫煙がCVDの重要なリスクファクターであることを認識し,受動喫煙の有無を患者に問い,慢性疾患予防法の一部として清浄な空気を求めるべきである」とコメントした。
 ウィスコンシン大学(ウィスコンシン州マディソン)たばこ研究・介入センターのMichael Fiore部長は「今回の研究は,喫煙の危険に関する優れた新知見を提供している。特に,受動喫煙の危険を子供を持つ両親に知らせることは重要だと思う」とコメントした。
 AHAの広報担当でサウスアラバマ大学(アラバマ州モビール)生理学のAubrey Taylor主任教授は「 1 日にたばこ 1 箱を吸う喫煙者のそばにいる非喫煙者は,自分で半箱を吸うのとほぼ同等の煙に曝露されている。受動喫煙が高血圧や糖尿病の発症に伴う心血管疾患の発症を加速し不可逆的にするらしいという事実は,リスクの重大さを示している」と述べた。

 

3, 妊婦の受動喫煙と低出生体重に関連 受動喫煙群のリスクは3.4倍 92%でコチニンを検出  メディカルトリビューン 22 Oct 1998
ノルウェー国立公衆衛生研究所およびウレバル大学病院(ともにオスロ)の小児科医と疫学者による研究グループは「妊婦の受動喫煙は出生児の体重に悪影響を及ぼす恐れがある」と『American Journal of Public Health』(88:120-124)に報告した。

受動喫煙群のリスクは3.4倍

 母親の喫煙と低出生体重児出産のリスクとの関連は既に立証されているが,妊娠中の受動喫煙の影響は今のところ不明である。
 同研究グループによると,母親の頭髪のニコチン濃度は低出生体重児出産のリスクを示す適切な指標になるという。同グループは正常出生体重児および低出生体重児の母親を対象に質問調査を行うとともに,頭髪に含まれるニコチンの分析を行った。その結果,母親自身は喫煙しないが妊娠後期に最高レベルの受動喫煙に曝露された妊婦の低出生体重児出産リスクは,曝露されなかった妊婦の3.4倍だった。児の頭髪に関する同様の分析では有意な結果は得られなかった。
 医療社会学者で米疾病管理センター(CDC,ジョージア州アトランタ)生殖保健部門のRobert Merritt氏は「今回の知見は,決定的とは言えないまでもかなり強力に,受動喫煙が生殖保健にもたらすリスクに関する教育の必要性を裏づけている。今回の研究が受動喫煙と低出生体重との相関関係を明示しているとは思わないが,過去の多数の報告を裏づけるものとはなっている」とし,「今回の研究によって明らかになったことは,受動喫煙と低出生体重の間になんらかの関係があるということである。著者らもこの研究の限界を認めている」と述べた。

92%でコチニンを検出

 これに対して,より批判的な専門家もいる。今回の研究では,母親の頭髪中のニコチンと児の頭髪中のニコチンとの相関や,児の頭髪中のニコチンと低出生体重との関連を明示することができなかった。ノースカロライナ大学(ノースカロライナ州チャペルヒル)産婦人科のWatson Bowes教授は「今回の結果を全体的に見ると不可解な点もあるが,興味深い知見ではある。受動喫煙への曝露をモニターする方法の 1 つとして有用である」とコメントした。
 Merritt氏によると,受動喫煙が懸念される理由の 1 つは,一連の試験で,受動喫煙に曝露された人の多くにニコチン副産物のコチニンが検出されていること。同氏は「米国の 5 歳以上の人口のほぼ92%で血中にコチニンが検出されている。コチニンはまた母乳にも検出されている」と述べた。
 さらに,受動喫煙の心疾患や乳幼児突然死症候群への関与も指摘されている。同氏は「受動喫煙は積極的喫煙と同等の大きな問題である」としている。

4,受動喫煙と冠動脈心疾患のリスク-疫学調査のメタアナリシス N Engl J Med 1999; 340 : 920 – 6 
Passive Smoking and the Risk of Coronary Heart Disease- A Meta – Analysis of Epidemiologic Studies

 

【背景】  受動喫煙の冠動脈心疾患のリスクに対する影響は議論の的になっている.そこで,われわれは,非喫煙者における受動喫煙に関連した冠動脈心疾患のリスクについてのメタアナリシスを実施した.

【方法】  MEDLINE と Dissertation Abstracts Online のデータベースの検索と,関連文献の引用の詳しい調査を行い,あらかじめ設定しておいた組み入れ基準に合致した 18 件(10 件がコホート調査,8 件がケースコントロール調査)の疫学調査を識別した.それらの調査の研究デザイン,対象被験者の特性,受動喫煙の暴露と転帰の評価方法,考えられる交絡因子の調整,およびリスクの推定値に関する情報は,3 名の研究者がそれぞれ別々に標準化プロトコールに従って要約した.

【結果】 全体では,環境中のタバコの煙の暴露を受けなかった非喫煙者と比較したときの暴露を受けた非喫煙者の冠動脈心疾患の相対リスクは 1.25 であった(95%信頼区間,1.17 ~ 1.32).コホート調査(相対リスク,1.21; 95%信頼区間,1.14 ~ 1.30),ケースコントロール調査(相対リスク,1.51; 95%信頼区間,1.26 ~ 1.81),男性(相対リスク,1.22; 95%信頼区間,1.10 ~ 1.35),女性(相対リスク,1.25; 95%信頼区間,1.15 ~ 1.34),および自宅(相対リスク,1.17; 95%信頼区間,1.11 ~1.24)や職場(相対リスク,1.11; 95%信頼区間,1.00 ~ 1.23)でタバコの煙の暴露を受けた人々において,受動喫煙は,冠動脈心疾患の相対リスクの上昇に一様に関連していた.暴露量との有意な用量依存性が認められ,タバコの煙の暴露を受けなかった非喫煙者と比較したときの 1 日当り 1~19 本のタバコの煙の暴露を受けた非喫煙者の相対リスクと,1 日当り 20 本以上のタバコの煙の暴露を受けた非喫煙者の相対リスクは,それぞれ 1.23,1.31 であった(直線的傾向性について p = 0.006).

【結論】 受動喫煙は,冠動脈心疾患のリスクのわずかな上昇に関連している.喫煙率の高さを考えると,冠動脈心疾患に関しては,公衆衛生における受動喫煙の結果は重要かもしれない.

5, 成人にも有害な受動喫煙
メディカルトリビューン 2001年10月25日 (VOL.34 NO.43) p.02

喘息,COPD,肺癌などのリスク高める

受動喫煙は小児喘息の原因となることが知られているが,第11回肺疾患学会(欧州呼吸器学会主催)では, 今までの研究では不確定とされていた成人喘息や,重篤な呼吸器疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD), 肺癌などのリスクを高めることを明確にする疫学研究が多数発表された。

女性は影響を受けやすい

 フィンランド国立職業保健研究所(フィンランド・ヘルシンキ)のMaritta Jaakola博士は,受動喫煙の成人喘息 などへの影響を証明するデータを紹介した。 同博士らは,南フィンランドに住む718例の非喫煙者を調べた。そのうち231例は過去 2 年半以内に喘息と診断 された患者,残り487例を対照群とした。職場でたばこの煙に曝露されている人は,そうでない人より喘息発症リスクが 2.16倍高く,また配偶者が喫煙する場合,そのリスクは4.77倍になることが判明した。 同博士は「この研究結果は成人喘息の発症に受動喫煙が影響していることを明確に証明している」と述べた。
 他の研究でも,喫煙者は男性が多いためか,女性は受動喫煙によるリスクにさらされているという。 臨床生理学研究所(伊ピサ)のSandra Balducci博士らがイタリア各地の非喫煙者女性2,335例を調査したところ, 47%が前の週に受動喫煙にさらされたと答えた。 これまでの受動喫煙の63%は家庭で,43%が職場でのものだという。 同博士によると,夫が喫煙者の場合は呼吸困難やCOPDに罹患している率が1.4~1.6倍高く,職場での受動 喫煙はそのリスクを倍増させる。 また,家庭と職場の両方で受動喫煙にさらされている場合はそうでない女性に比べて,これらの疾患リスクは 2.8~4.2倍高いことが明らかになった。
 放射線衛生研究所(独ミュンヘン)のMichaela Kreuzer博士とGSF疫学研究所(ミュンヘン)のH. Erich Wichmann博士は,女性肺癌患者の20~30%を占めると言われている非喫煙者234例と生涯に400本以下の 喫煙女性535例とを比較検討した。
 その結果,職場での受動喫煙は間違いなく肺癌のリスクファクターであることが明らかになった。 一方,夫の喫煙と肺癌発症との相関性についてはそれほど明確ではない。 夫により 7 万6,000時間以上受動喫煙にさらされている女性の肺癌リスクは1.67倍上昇し,職場で 4 万時間以上 受動喫煙にさらされている女性のリスクは2.67倍上昇していた。

地域により被害程度に差

 同学会では欧州16か国36施設での調査をまとめた欧州共同体呼吸器保健調査の結果も初めて報告され, 受動喫煙についての調査結果がウプサラ大学生物工学センター(スウェーデン・ウプサラ)のChrister Janssen 博士により紹介された。
36施設のうち12施設では被験者の半数が日常的に受動喫煙に曝露されていたが,地域による差が大きく, ウプサラではわずか 2 %であるのに対し,スペインのガルダカオでは54%であった。
 受動喫煙者は,労作性呼吸困難や過剰な気管支反応などの症状を有するものが多く,同博士は「特に職場 などの環境からたばこの煙を減少させることが呼吸器の健康増進につながるだろう」と結論している。

 

6, The accumulated evidence on lung cancer and environmental tobacco smoke

BMJ 1997;315:980-988 (18 October)

A K Hackshaw, lecturer,a M R Law, reader,a N J Wald, professor a

a Department of Environmental and Preventive Medicine, Wolfson Institute of Preventive Medicine, St Bartholomew’s and Royal London School of Medicine and Dentistry, London EC1M 6BQ

【OBJECTIVE】 To estimate the risk of lung cancer in lifelong non-smokers exposed to environmental tobacco smoke.

【DESIGN】 Analysis of 37 published epidemiological studies of the risk of lung cancer (4626 cases) in non-smokers who did and did not live with a smoker. The risk estimate was compared with that from linear extrapolation of the risk in smokers using seven studies of biochemical markers of tobacco smoke intake.

【MAIN OUTCOME MEASURE】 Relative risk of lung cancer in lifelong non-smokers according to whether the spouse currently smoked or had never smoked.

【RESULTS】 The excess risk of lung cancer was 24% (95% confidence interval 13% to 36%) in non-smokers who lived with a smoker (P<0.001). Adjustment for the effects of bias (positive and negative) and dietary confounding had little overall effect; the adjusted excess risk was 26% (7% to 47%). The dose-response relation of the risk of lung cancer with both the number of cigarettes smoked by the spouse and the duration of exposure was significant. The excess risk derived by linear extrapolation from that in smokers was 19%, similar to the direct estimate of 26%.

【CONCLUSION】 The epidemiological and biochemical evidence on exposure to environmental tobacco smoke, with the supporting evidence of tobacco specific carcinogens in the blood and urine of non-smokers exposed to environmental tobacco smoke, provides compelling confirmation that breathing other people’s tobacco smoke is a cause of lung cancer.

Key messages
・A woman who has never smoked has an estimated 24% greater risk of lung cancer if she lives with a smoker
・Neither bias nor confounding accounted for the association
・There is a dose-response relation between a non-smoker’s risk of lung cancer and the number of cigarettes and years of exposure to the smoker
・The increased risk was consistent with that expected from extrapolation of the risk in smokers using biochemical markers
・Tobacco specific carcinogens are found in the blood and urine of non-smokers exposed to environmental tobacco smoke
・All the available evidence confirms that exposure to environmental tobacco smoke causes lung cancer

 

7, Reanalysis of epidemiological evidence on lung cancer and passive smoking

BMJ 2000;320:417-418 ( 12 February )

J B Copas, professor, J Q Shi, research fellow.
Department of Statistics, University of Warwick, Coventry CV4 7AL

【OBJECTIVE】 To assess the epidemiological evidence for an increase in the risk of lung cancer resulting from exposure to environmental tobacco smoke.

【DESIGN】 Reanalysis of 37 published epidemiological studies previously included in a meta-analysis allowing for the possibility of publication bias.

【MAIN OUTCOME MEASURE】 Relative risk of lung cancer among female lifelong non-smokers, according to whether her partner was a current smoker or a lifelong non-smoker.

【RESULTS】 If it is assumed that all studies that have ever been carried out are included, or that those selected for review are truly representative of all such studies, then the estimated excess risk of lung cancer is 24%, as previously reported (95% confidence interval 13% to 36%, P<0.001). However, a significant correlation between study outcome and study size suggests the presence of publication bias. Adjustment for such bias implies that the risk has been overestimated. For example, if only 60% of studies have been included, the estimate of excess risk falls from 24% to 15%.

【CONCLUSION】 A modest degree of publication bias leads to a substantial reduction in the relative risk and to a weaker level of significance, suggesting that the published estimate of the increased risk of lung cancer associated with environmental tobacco smoke needs to be interpreted with caution.

Key messages
・A systematic review of epidemiological studies on passive smoking estimated the increased risk of lung cancer as 24%
・There is clear evidence of publication bias in these studies
・Reanalysis of the data allowing for the possibility of publication bias substantially lowers the estimate of relative risk