日本禁煙推進医師歯科医師連盟では、学術発表と会員の情報交換の場として年1回学術総会 を開催しております。皆様のご参加をお待ちしております。日時等は改めてお知らせ致します。




<事務局>
〒807-8555
福岡県北九州市八幡西区
医生ヶ丘1-1
産業医科大学
産業生態科学研究所
健康開発科学研究室
Tel: 070-5497-5742
Fax: 093-602-6395
事務局常駐日
9:00~16:30
月~金 祝祭日除く
E-Mail:nosmoke.adm@gmail.com

禁煙支援

 

1、女性は禁煙が難しい 男性より心理的依存強い
メディカルトリビューン[2000年3月16日 (VOL.33 NO.11) p.2]
女性は男性より喫煙に対する心理的依存が強い傾向があるようだ。女性の禁煙が男性に比べて困難なのはこのためかもしれない。バージニア医科大学(バージニ ア州リッチモンド)心理学および薬物・アルコール研究所のThomas Eissenberg氏らは「女性は男性よりも,禁煙による情動不安や集中力欠如などの禁断症状からの不快感を強く感じる」とNicotine & Tobacco Research(1:317-324,1999)に報告した。

喫煙による軽快感が大きい

 

 この研究は米国立薬物中毒研究所(NIDA)の後援によるもので,たばこ類の使用経験がある男女を対象に,喫煙の自覚的および生理学的効果を調査した。
 その結果,生理学的効果には性差がなく,男女同様に心拍数の増加や血圧上昇,皮膚温度の低下などが見られた。通常,こうした効果はたばこに含まれるニコチンの作用によるものと考えられている。
 しかし,自覚的効果には性差が見られ,女性のほうが喫煙によってより大きな影響を受けていた。これが女性の禁煙が困難である理由かもしれない。今回の調 査によると,たばこを 2 本吸うごとの喫煙欲求の低下は,男性より女性で大きかった。禁断症状の不快感の低下についてはさらに大きな性差が見られた。これは,女性のほうが男性より も喫煙から大きな軽快感と満足感を得ている可能性を示唆しており,過去の研究によって示された女性の禁煙の困難さを説明するものである。
 調査結果に大きな性差が見られた禁断症状で最も一般的だったものは,喫煙欲求,喫煙への切迫願望,集中力欠如,情動不安であった。
 Eissenberg氏はこの知見について「種々の禁断症状発現の報告が喫煙後間もなく増加し始めることは,あまり知られていない事実である。この作用は,たばこ 1 本を吸った10~15分後にさえも見られることがある」とコメントした。

喫煙に高い感受性

 今回の研究ではまた,男性に比べて女性のほうが喫煙の一服が小さく短時間である,という興味深い知見も明らかになった。しかし,これは必ずしも女性喫煙者のニコチン摂取量が男性喫煙者より少ないことを意味しているわけではない。
 Eissenberg氏は「仮に,女性喫煙者はニコチン摂取量が少なく,したがって,その反復投与に対する身体的反応に限って言えば女性が受ける身体的 効果は低レベルである,と仮定したとしても,それは女性の喫煙に対する心理的依存が少ないことを意味しない。実際,女性のほうが心理的依存度は高い。今回 の研究は,ニコチンに対する反応には性差はないが,喫煙に,女性のほうが高い感受性を持つなんらかの別の作用がある可能性を示していると思われる。今後, さらなる研究が必要であろう」と述べた。

 

禁煙には医療・集団の支援を

 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校(ニューヨーク州ストーニーブルック)精神医学のSheila B. Blume臨床教授は「この領域で研究が行われていることは喜ばしい。1962年に私がこの分野に着手したとき,嗜癖のメカニズムは全くわかっていなかっ た。しかし,今では現代的神経科学の手法によって,嗜癖性を有する物質は,脳の,おそらくある特定の部分に至る共通の最終経路を有することがわかってい る。その特定の部分とは,食物や飲料水の獲得のような生命維持に必要で,ある種の喜びを得られる行動を,われわれに確実に反復させるために自然がつくり出 した(発生した)部分である。ニコチンのような物質も脳内のこの領域を刺激する」と述べた。
 Eissenberg氏は「このトピックについては今後,さらに研究を続ける必要がある。貼付薬,ガム,スプレー,吸入剤などのニコチン補充製剤が普及 することを期待する」と述べ,「最善の禁煙支援法を研究するうえで取り組むべきもう 1 つの重要な領域は,喫煙再開の予防である」と強調した。

 

2, ライフスタイルの変革を望む人々にカウンセリングを
禁煙には医師の協力が必要
メディカルトリビューン[1999年2月25日 (VOL.32 NO.8) p.16]
禁煙指導の専門医らは「たばこをやめたいと願う米国人は抗うつ薬amfebutamone(Zyban,Glaxo Wellcome社)やニコチンの代用品を用いれば禁煙は簡単にできると思っているが,医師から行動様式に関してカウンセリングを受けないと多くの場合, 挫折することになる」と発表した。

 

儀式として生活に浸透

 禁煙を始める米国人の35~40%はガム,ニコチンパッチや他の治療法のお世話になると見られている。しかし,平均的な喫煙者の場合,生活様式を変えるよう強く勧められて,禁煙するんだという意志を持ち続けない限り,禁煙は失敗に終わるという意見が大勢を占めている。
 アリゾナ大学(アリゾナ州ツーソン)で行われているアリゾナニコチン・たばこ研究プログラムの責任者Scott Leischow博士は「喫煙行動は儀式となって喫煙者の生活に根強く浸透しており,まずはその行動を変える必要がある。薬物療法とカウンセリングの併用 で,禁煙できる可能性は劇的に高くなるだろう」と述べた。
 ジョージワシントン大学医療センター(ワシントンD.C.)内科のGigi El-Bayoumi准教授は「体に染み込んだ喫煙習慣を断ち切る最良の方法は,つい,たばこに火をつけてしまうような生活パターンをすべて排除すること である。例えば,朝のコーヒーを飲むときに一服するなら紅茶に変えるよう指導し,車での出勤途中に吸わないではいられないならバス通勤にしなさいとアドバ イスすればよい。自分が喫煙者にどれほどの影響を与えられるか理解していない医師が多いが,われわれ医師は喫煙者に対していまだに大きな影響力を持ってい る」と述べた。

具体例を挙げて指導

 禁煙指導の専門家らによると,たばこをやめたいという喫煙者の動機は,たばこの害という単純な事実により強固なものに なりうる。しかし,「喫煙すると癌になる」というメッセージは軽く受け流され,特に人人が「どんなものにも発癌性はある」と考えるような時代ではそうであ る。むしろ,面と向かって伝えるメッセージには「心疾患のリスク」などというような抽象的な概念は避けるべきである。
 トラック運転手や建設作業員には禁煙のメリット,例えば「健康を維持できて仕事にあぶれる回数が減ること,体力が衰えないこと,性生活が楽しくなるこ と」を言ってやればよい。子供を持つ女性には「たばこを吸うと子供が癌や喘息になりやすくなる」と説明し,10代の少女には「たばこを吸うと息がどれほど 臭くなるか,たばこを買わなければ欲しい服がどれほど早く手に入るか」を教えてやればよい。
 10代の子供たちには,「たばこを吸うのは子供じみた,ばかげた習慣だ」と言ってやるのも 1 つの手である。ベイラー医科大学(テキサス州ヒューストン)家庭医学科のAlan Blum准教授は,10代の子供にたばこをやめさせるには「よく聞きなさい。君たち,たばこ吸うには年を食いすぎているぞ。たばこなんて大人ぶりたいガキ のすることだ」と言ってやるのが一番効果的としている。
「いつから吸ってるの」とか「 1 日に何本くらい吸うの」などといった,一本調子な質問は喫煙者を身構えさせる恐れがある。そうではなく,コミュニケーションギャップを埋めるような質問を することを同准教授は勧めている。例えば,「たばこ買うのにどれくらいおカネかかってる?」とか「好きな銘柄は何?」といった質問なら会話が進みやすい。 このような質問をすると,「この医者は単なる知ったかぶり屋や,タバコという有害な葉っぱの危険性を伝える伝道者ではない」と思わせることができる。

身の周りからたばこを排除

 マイモニデス医療センター(ニューヨーク・ブルックリン)内科のHarriet Stathakos博士は「私は,amfebutamoneやニコチンパッチについて喫煙者から繰り出されるおきまりの質問や間髪を入れない問いかけに対して当意即妙に答えられる」と語っている。しかし,同博士と喫煙者との会話は,ライフスタイルや環境を変えることについての話題が多い。例えば,最初の 1 ~ 2 か月は一番挫折しやすい時期なので,少なくともその期間はたばこを吸う友達に近寄らず,たばこに手が伸びやすい行動は慎むよう指導している。  また,同博士は喫煙者側から禁煙への準備が 9 割がた整ったことが示されるまで介入しないことにしている。喫煙者から電話があって初めて「たばこをやめる日」を設定する。その日に向けて喫煙者の自宅を「たばこのない」家とし,灰皿を置かず,電話の近くなどたばこの誘惑が強い場所にはシュガーレスガムなどを置くようにする。「たばこをやめる日」が近づくにつれて喫煙本数をできるだけ減らし,その日が来たならamfebutamoneとニコチンパッチを開始する。amfebutamoneの効果を実証した研究も多いが,同博士は喫煙者に「より良い結果を得るにはamfebutamoneとニコチンパッチを併用すべきである」と説明している。また,同博士は,大部分の健康維持組織(HMO)はカバーしていないが,3 ~ 4 週ごとに喫煙者宅を訪問することを勧めている。

禁煙指導は保険の対象外

 ウィスコンシン大学内科のMichael C. Fiore准教授は「疾患を予防するための薬剤,器具,短時間のカウンセリングなどにかかる経費を支給してくれる保険プランは半分もない。われわれは医師 の役目として,禁煙するための投薬やカウンセリングが標準的な保険プランの適用範囲となり,すべての患者が間違いなく保険で禁煙できるよう,HMOや保険 業者に働きかけるべきである」と述べた。

3, うつ病の既往は禁煙の妨げにならない
メディカルトリビューン[2000年3月16日(VOL.33 NO.11) p.12]
ブラウン大学およびミリアム病院(いずれもロードアイランド州プロビデンス)のRaymond Niaura博士らは,うつ病の既往は必ずしも禁煙の妨げにならない,とNicotine & Tabaco Research(1:233-239,1999)に報告した。以前の研究で,うつ病の既往があると,ない場合に比べて禁煙が難しいことが指摘されていた。

禁煙後の再喫煙リスクが高い

 今回,検討対象となったのは喫煙者133例(うち41例がうつ病の既往あり)。これらの喫煙者に対して最低限の禁煙サ ポートとして,セルフヘルプの禁煙パンフレットの配布と,研究者による初回インタビューから 7 日目に禁煙指導が行われた。禁煙開始日,禁煙 2, 7,14,28日後にニコチン禁断症状,うつ症状,禁煙率を評価した。
 全30日間のフォローアップ期間中,完全に禁煙を続けた参加者はわずか15例だった。全体的には喫煙率は開始時に比べて低下した。
 Niaura博士は「うつ症状は短期間の禁煙成功には影響しないが,禁煙後の喫煙再開リスクの増大を予測するかもしれない」と言う。禁煙の試みからほぼ 1 か月で参加者にうつ症状の増加が認められた。
 同博士は「うつ病の既往の有無はそれほど重要ではないが,現在のうつ病の程度が重要であると考えられる。また,うつ病エピソードが新しいほど,そして再発が多いほど禁煙が難しいことも明らかだ」と指摘した。
 また,同博士は「うつ病の既往が必ずしも禁煙の成否を予測しなかったとしても,研究から 1 か月後のうつ症状の発現を予測した。多分,これが最も興味深いことではないか。うつ病の既往を禁煙後の抑うつ症状悪化リスクとして特定したなら,次の課題 はその時点を越えると何が起きるかだ。われわれは,長期的影響は何か,最終的に禁煙できるのはだれか,逆戻りするのはだれかを知る必要がある」と語った。
 しかし,マサチューセッツ総合病院およびハーバード大学(いずれもボストン)のタバコ研究の責任者であるNancy Rigotti博士によると,少なくとも短期間では,うつ病の既往者は今回の知見が励みになるはずだ。同博士は「研究は,多面的な問題の一局面であるが重 要な点を突いている。特に,現在無症状のうつ病既往者は最初の 1 か月間で禁煙可能という点が重要だ。彼らは一般の人と同じくらい禁煙のチャンスがある,と期待させる朗報だ。禁煙は絶対に行うべき価値がある」と話した。

4, Does Cigarette Smoking Cause Stress?

Andy C. Parrott
Smokers often report that cigarettes help relieve feelings of stress. However, the stress levels of adult smokers are slightly higher than those of nonsmokers, adolescent smokers report increasing levels of stress as they develop regular patterns of smoking, and smoking cessation leads to reduced stress. Far from acting as an aid for mood control, nicotine dependency seems to exacerbate stress. This is confirmed in the daily mood patterns described by smokers, with normal moods during smoking and worsening moods between cigarettes. Thus, the apparent relaxant effect of smoking only reflects the reversal of the tension and irritability that develop during nicotine depletion. Dependent smokers need nicotine to remain feeling normal. The message that tobacco use does not alleviate stress but actually increases it needs to be far more widely known. It could help those adult smokers who wish to quit and might prevent some schoolchildren from starting.

5, 禁煙に対するブプロピオン徐放剤とプラセボの比較
N Engl J Med 1997; 337 : 1195 – 202
A COMPARISON OF SUSTAINED – RELEASE BUPROPION AND PLACEBO FOR SMOKING CESSATION
Richard D. Hurt, and others

【背景および方法】   禁煙に対する抗うつ剤投薬の臨床試験は,多様な結果を生じた.
われわれは,禁煙に対するブプロピオンの徐放剤の二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した.
現在うつ病の喫煙者を除外したが,うつ病の既往のある患者は除外しなかった.
被験者 615 人を無作為割付けして,プラセボまたはブプロピオン 100,150,または 300mg /日を 7 週間にわたって投与した.
目標禁煙予定日 (または“目標禁煙日”) は,治療開始後 1 週間とした.
ベースライン,治療中毎週,そして 8,12,26,および 52 週目に簡単なカウンセリングを行った.
自己申告禁煙は,呼気中の一酸化炭素濃度 10ppm 未満によって確認した.

【結果】  7 週間の治療終了時,一酸化炭素濃度測定によって確認した禁煙率は,プラセボ群で 19.0%,100mg 群で 28.8%,150mg 群で 38.6%,そして 300mg 群で 44.2% ( p < 0.001 ) であった.
1 年目,それぞれの禁煙率は,12.4%,19.6%,22.9%,そして 23.1%であった.
150mg 群 ( p = 0.02 ) および 300mg 群 ( p =  0.01 ) の禁煙率は,プラセボ群より有意によかったが,100mg 群 ( p = 0.09 ) では有意でなかった.
治療終了まで禁煙し続けた被験者では,平均絶対体重増加は用量と反比例した (プラセボ群で 2.9kg,100mg および 150mg 群で 2.3kg,そして 300mg 群で 1.5kg の増加; p = 0.02 ).
Beck 抑うつ調査表によって連続的に測定した抑うつスコアには,治療効果を認めなかった.被験者 37 人が副作用のために途中で治療中止した; 発生率はすべての群で同程度であった.

【結論】  ブプロピオンの徐放剤は禁煙に対して有効で,体重増加の減弱を伴い,副作用は最小限であった.

 

6,禁煙のための徐放性ブプロピオン,ニコチンパッチ,またはそれら併用のコントロール試験N Engl J Med 1999; 340 : 685 – 91
A Controlled Trial of Sustained-Release Bupropion, a Nicotine Patch, or Both for Smoking Cessation
Douglas E. Jorenby, and others

【背景および方法】  ニコチン代替療法と抗うつ薬であるブプロピオンは,禁煙の助けになっている.
そこで,われわれは,禁煙のための徐放性ブプロピオン(被験者数 244 例),ニコチン パッチ(被験者数 244 例),ブプロピオンと
ニコチンパッチの併用(被験者数 245 例),およびプラセボ(被験者数 160 例)の二重盲検法によるプラセボを対照とした比較を行った.
うつ病の臨床所見が認められた喫煙者は除外した.治療は,ブプロピオン(最初の 3 日間は 150 mg を 1 日 1 回,それ以降は
150 mg を 1 日 2 回)またはそのプラセボの 9 週間投与,およびニコチンパッチ療法(2 週目~ 7 週目までの 1 日量は 21 mg,
8 週目の 1 日量は 14 mg,9 週目の 1 日量は 7 mg)またはそのプラセボの 8 週間投与であった.喫煙中止とした目標日は,通常の場合は 8 日目であった.

【結果】  12 ヵ月時点の禁煙率は,プラセボ群が 15.6%であったのに対して,ニコチンパッチ群は 16.4%,ブプロピオン群は 30.3%
(p < 0.001),ブプロピオンとニコチンパッチ併用群は 35.5%(p < 0.001)であった
7 週目までの体重の平均増加量は,プラセボ群の被験者が 2.1 kg であったのに対して,ニコチンパッチ群は 1.6 kg,ブプロピオン群は
1.7 kg,併用治療群は 1.1 kg(p < 0.05)であった.7 週目時点の体重増加量は,併用治療群がブプロピオン群とプラセボ群よりも有意に少なかった
(どちらの群との比較においても p < 0.05).一方または両方の薬剤を中止した被験者は全体で 311 例(34.8%)であった.
そのうちの 79 例の被験者は有害事象のために治療を中止した:
その内訳は,プラセボ群が 6 例(3.8%),ニコチンパッチ群が 16 例(6.6%),ブプロピオン群が 29 例(11.9%),
併用治療群が 28 例(11.4%)であった.もっとも発現頻度の高かった有害事象は,不眠症と頭痛であった.

【結論】  徐放性ブプロピオンの単剤またはニコチンパッチとの併用による治療は,ニコチンパッチの単剤またはプラセボのいずれよりも,
長期の禁煙率が有意に高いという結果が得られた.
さらに,併用療法の禁煙率はブプロピオン単剤の禁煙率よりも高かったが,その差は統計学的に有意な差ではなかった.