日本禁煙推進医師歯科医師連盟では、学術発表と会員の情報交換の場として年1回学術総会 を開催しております。皆様のご参加をお待ちしております。日時等は改めてお知らせ致します。




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呼吸器疾患

 

1,葉巻の男の心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌のリスクへの影響
Carlos Iribaren et al(Oakland). Effect of cigar smoking on the risk of cardiovascular disease, chronic obstructive pulmonary disease, and cancer in men. N Engl J Med 1999; 340:1773-80.

【背景】米国では葉巻の売り上げが1993以来増えている。葉巻は特定の癌やCOPDの危険因子として知られているが、心血管疾患との関係ははっきりしていない。

【方法】17,774人の男性30-85歳の追跡調査(1971-1995)。葉巻使用者1546人と非喫煙者16,228人。

【結果】多変量解析で、葉巻者は非喫煙者に比べて相対危険度は、心血管疾患に対して1.27、COPDに対して1.45、上部消化管癌に対して2.02、肺癌に対して2.14だった。葉巻とアルコールには相乗効果が認められた。

【結論】他の危険因子とは独立に、葉巻の常習は心血管疾患、COPD、上部消化管、肺癌のリスクを高める。

 

2, 紙巻きタバコの喫煙と侵襲性の肺炎球菌疾患
Cigarette Smoking and Invasive Pneumococcal Disease J. Pekka Nuorti, and others  N Engl J Med 2000; 342 : 681 – 9

【背景】  侵襲性の肺炎球菌疾患に罹患していることを除くと健康であるという成人の約半数は,紙巻きタバコの喫煙者である. 今回,われわれは,住民ベースの症例対照研究を実施し,肺炎球菌感染症の危険因子としての紙巻きタバコの喫煙とその他の因子の重要性について評価した.

【方法】  侵襲性の肺炎球菌疾患(通常は無菌である部位からのStreptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)の分離よって定義した)に罹患し,年齢が 18 ~ 64 歳までの正常な免疫能を有する患者を,州都のアトランタ,ボルチモア,およびトロントの研究所で実施されていた能動的監視によって同定した 電話による聞き取り調査を,228 人の患者と,無作為電話番号法によって連絡した 301 人の対照者について行った.

【結果】  これらの患者の 58%と対照者の 24%が,現在喫煙者であった. ロジスティック回帰分析によって,年齢,研究施設と,男性,黒人,慢性疾患,低レベルの教育水準,および託児所に預けている幼児との同居などの他の影響を受けない独立した危険因子で補正すると,侵襲性の肺炎球菌疾患には,紙巻きタバコの喫煙(オッズ比,4.1; 95%信頼区間,2.4 ~ 7.3),および非喫煙者の受動喫煙(オッズ比,2.5; 95%信頼区間,1.2 ~ 5.1)との関連が認められた.1 日当りの紙巻きタバコの現在喫煙本数,喫煙の箱-年(1 日当りに喫煙したタバコの箱数に喫煙年数を乗じた値)には,用量反応関係が認められた. 補正した人口属性危険度は,紙巻きタバコの喫煙が 51%,受動喫煙が17%,慢性疾患が 14%であった.

【結論】  紙巻きタバコの喫煙は,正常な免疫能を有する非高齢成人において,侵襲性の肺炎球菌疾患のもっとも強力な独立した危険因子である. 喫煙率が高く,しかもその人口属性危険度が大きいので,喫煙と環境中のタバコの煙への曝露を減らすことを目的としたプログラムには,肺炎球菌疾患の発症を減少させる可能性がある.

 

3, Tobacco industry efforts subverting International Agency for Research on Cancer’s second-hand smoke study Elisa K Ong, Stanton A Glantz
Lancet 2000; 355: 1253-59

Institute for Health Policy Studies, Cardiovascular Research Institute, Department of Medicine, University of California, San Francisco, San Francisco, CA USA (E K Ong BA, Prof S A Glantz PhD)

Correspondence to: Dr Stanton A Glantz, Division of Cardiology, Box 0130, University of California, San Francisco, CA 94143-0130, USA (e-mail:glantz@medicine.ucsf.edu)

Scientific reports on second-hand smoke have stimulated legislation on clean indoor air in the USA, but less so in Europe. Recently, the largest European study, by the International Agency for Research on Cancer (IARC), demonstrated a 16% increase in the point estimate of risk in lung cancer for nonsmokers, a result consistent with earlier studies. However, the study was described by newspapers and the tobacco industry as demonstrating no increase in risk. To understand the tobacco industry’s strategy on the IARC study we analysed industry documents released in US litigation and interviewed IARC investigators. The Philip Morris tobacco company feared that the study (and a possible IARC monograph on second-hand smoke) would lead to increased restrictions in Europe so they spearheaded an inter-industry, three-prong strategy to subvert IARC’s work. The scientific strategy attempted to undercut IARC’s research and to develop industry-directed research to counter the anticipated findings. The communications strategy planned to shape opinion by manipulating the media and the public. The government strategy sought to prevent increased smoking restrictions. The IARC study cost $2 million over ten years; Philip Morris planned to spend $2 million in one year alone and up to $4 million on research. The documents and interviews suggest that the tobacco industry continues to conduct a sophisticated campaign against conclusions that second-hand smoke causes lung cancer and other diseases, subverting normal scientific processes.

In 1978, a confidential study for the US Tobacco Institute concluded that public concern about second-hand smoke, also referred to as environmental tobacco smoke (ETS) and “passive smoking”, was “the most dangerous threat to the viability of the tobacco industry that has yet occurred”.1 The industry’s concern was borne out as three landmark reports concluded that second-hand smoke did cause lung cancer and other diseases,2-4 leading to legislation on smoke-free environments in the USA.5,6 Few such studies had been done in Europe,7 and European countries have been slower to implement smoke-free measures.8

This European situation was poised for change when the International Agency for Research on Cancer (IARC), a research branch of the World Health Organization (WHO), undertook, from 1988, the largest European epidemiological study on lung cancer and second-hand smoke.7 Consistent with earlier studies (panel 1),2-4,9-12 IARC7 observed a 16% increase in risk for nonsmoking spouses of smokers (95% CI 0・93-1・44), and a 17% increase for nonsmokers’ exposure in the workplace (95% CI 0・94-1・45).7 The study was too small to detect, with 95% confidence, an increase in risk of around 16%, the sample size having been selected to have enough power to detect a relative risk of 1・3. The October, 1998 issue of the Journal of the National Cancer Institute published the study with an editorial concluding that the new study data, plus previous evidence, presented “an inescapable scientific conclusion . . . that ETS is a low-level lung carcinogen”.13

This journal publication was not, however, the first the public had heard of the IARC study. On March 8, 1998, the London Sunday Telegraph reported that WHO was withholding a study that not only failed to show that passive smoking caused lung cancer but also might even demonstrate a protective effect.14 British American Tobacco (BAT), which had held private media briefings15 to ensure “balanced” coverage of the forthcoming study, was suspected to have fuelled the story.16 BAT responded that it knew of IARC’s preliminary results from earlier conferences and IARC’s biennial report,17 which had reported the study’s progress by providing results but no conclusion. Despite press releases from WHO18 and IARC19 noting that the study still awaited peer-review publication and calling the Sunday Telegraph interpretation of statistical significance “false and misleading”,19 the allegations quickly spread around the world, from Australia20 to Zimbabwe.21

To understand the industry’s strategy towards the IARC study, we examined previously confidential tobacco industry documents that reveal how Philip Morris (PM) spearheaded an extensive inter-industry effort to stop, affect the wording of, delay, and counteract the IARC study.

 

4, 喫煙経験者は肺癌リスクがいつまでも高い  50歳までに禁煙すればリスク低下の希望も
メディカルトリビューン 10 Aug 1998
当地で開かれた米国肺胸部学会の集会で,ソルフォード王立病院(英ソルフォード)の肺研究者であるRonan O’Driscoll博士が報告したところによると,喫煙経験者は,禁煙してから何年経過していようと喫煙未経験者に比べ,肺癌にかかるリスクがはるかに高い。しかし,喫煙者は50歳までに禁煙すれば肺癌の発症リスクを 5 分の 1 にまで減らすことができる,という。  今回の知見は2,052例の研究から得られたもので,対象の内訳は肺癌患者493例と喫煙関連の疾患のない1,559例。これは従来の研究を追認するものである。

禁煙後年数長いほうがリスク高い

 O’Driscoll博士によると,たばこを全く吸わなかった人に比べると,喫煙経験者で禁煙してから 1 ~10年の人は75歳までに肺癌を発症するリスクは33倍になる。また,11~20年禁煙していればリスクは18倍に下がり,20年以上経過した人はリスクが29倍になった。
 同博士は20年以上たばこを吸っていない人のほうが,11~20年経過している人に比べ,肺癌を発症するリスクが高いわけはその年齢にあると考えている。癌のリスクは加齢とともに増えるということである。結局,同博士はたばこは早くやめたほうが恩恵も大きいと結論付けている。
 同博士の経験では,たばこを吸わないという患者の多くが実は喫煙経験があるという。長いこと禁煙していても肺癌のリスクはずっと高いので,医師は患者に喫煙歴を必ず聞くべきであるとしている。
 今回の研究に関し,ウィスコンシン大学(ウィスコンシン州マディソン)のたばこ研究・介入センターのMichael Fiore所長は「たばこをやめることは癌のリスクを減らすことを示してきた従来の数々の証拠を支持するものであるが,禁煙したからといっても発癌リスクが喫煙経験のない人にまでは戻らないことを示している」と述べている。

AMIリスク低下は比較的容易

M. Fiore氏
 同所長は「今回の知見でも,臨床医と患者へのメッセージは非常に明白だ。禁煙することは健康を顕著に増進させ,循環器疾患,肺疾患,腫瘍などのリスクを減少させる。臨床医が忘れてはならないのは,禁煙することが患者が将来にわたって健康を維持するために最も有効な方策だということ。禁煙すれば,たばこが悪影響をもたらすすべての臓器が守られ多大の恩恵が得られる」と強調した。
 ただし,各臓器でたばこによる有害作用からの回復程度が異なるため,同所長は「例えば,現在喫煙している人は,急性心筋梗塞(AMI)のリスクが著しく増加しているが,禁煙すればそのリスクは 1 年以内に50%減少し,5 ~10年以内に喫煙をしたことのない人のレベルにまで下がる。しかし,喫煙者の癌のリスクは一度増加すると,減少するのに時間がかかり,おそらくは喫煙経験のない人のレベルには達しない」と述べている。

 

5, 喫煙はHIV陽性者の免疫系に悪影響  気管支肺胞洗浄液中のリンパ球数を減少させる
メディカルトリビューン[1999年2月11日 (VOL.32 NO.6) p.1]
喫煙は肺に有害であるという事実に今さら驚く人はほとんどいない。しかし,喫煙はHIVを有する患者にさらなる悪影響をもたらしかねないとする新たな研究が発表された。
 これはオハイオ州立大学(オハイオ州コロンバス)のMark D. Wewers博士らがAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(158:1543-1549,1998)に報告したもので,92例のHIV陽性者のうち58例の喫煙者は,34例の非喫煙者に比べ,気管支肺胞洗浄液中のリンパ球数が少ない傾向にあった。さらに,喫煙者ではインターロイキン(IL)-1および腫瘍壊死因子(TNF)の濃度も低下していた。

CD8細胞の減少を特に懸念

 Wewers博士は「この研究は実際の肺疾患を追跡したものではないが,HIV陽性者では既に肺炎や他の肺感染症を発症するリスクが増加しているので,喫煙は健康に対して顕著な影響があるだろう」と述べた。
 同博士は,喫煙者ではCD8細胞として知られるリンパ球数が減少しているという知見を特に懸念している。「これら細胞はHIVを攻撃する際に重要な役割を果たすと考えられている。CD8細胞が減少すると,HIV陽性喫煙者の抗ウイルス活性が抑制されるだろう。さらに,動物実験から,IL-1およびTNFの濃度が低下すると,細菌感染のリスクが増加することが示されている。同じことがヒトについても当てはまるなら,これら物質の濃度が低下しているHIV陽性喫煙者にとって,朗報とはならないだろう」と述べている。
 また,同博士は「これらの観察から,喫煙は肺の局所的防衛の抑制に関与すること,HI V感染喫煙者の肺防御に対して禁煙が良い影響をもたらす可能性があることが示された」と主張。「この時点では,われわれの観察の意義は推論的なものにすぎないが,喫煙に関する今回の知見は病態生理学的に重要であることを示す状況証拠がある」と述べた。

免疫抑制は肺に限定

 研究では,気管支鏡で肺洗浄液を採取し,喫煙状態は自己申告および唾液中のコチニン濃度で判定した。患者はすべて無症状性で,肺感染症の既往歴はなかった。
 喫煙はHIV陽性者の肺のリンパ球数減少に関与していたが,血流中では細胞数の減少は認められなかった。実際,喫煙者の血流中には,統計学的には有意ではなかったが,平均数よりやや多いリンパ球が存在していた。Wewers博士は「これは,喫煙の免疫抑制は身体の特定領域,この場合は肺に限定されることを示しているのかもしれない」と報告している。
 米国胸部学会のスポークスマンでもあるワシントン大学(ワシントン州シアトル)内科のJ. Randall Curtis助教授は,今回の知見を「驚くには当たらないが,非常に素晴らしい研究で説得力がある」とコメントし,「医師は,HIV陽性喫煙者では細菌性肺炎や気管支炎のリスクが高いことを知っている。しかし,この研究は喫煙が肺にどのように影響するかを理解する一助となるので重要である。機序の解明にも役立つだろう」と述べた。
 HIV非感染の21例の対照群では,喫煙はCD8細胞数に影響を与えなかった。しかし,喫煙によって同群のCD4細胞数は減少したという。

 

6, 喫煙と肺癌  腺癌でも関連性深い消化管癌などの原因に
メディカルトリビューン[2000年4月13日 (VOL.33 NO.15) p.20]
 欧米では,男子の肺癌は直接喫煙と関連性が高く,女子の肺癌は配偶者の喫煙(間接喫煙)と関連性が高いと報告されている。しかし,わが国では,喫煙と肺癌との関係について,扁平上皮癌との関連性は高いが,腺癌との関連性は低いと考えられてきた。埼玉県立がんセンター呼吸器科の野口行雄氏らは,喫煙と腺癌の関係を解析し,腺癌も喫煙が原因と考えられると考察している。さらに,喫煙粒子の体内動態と癌の研究により,直接もしくは間接喫煙が上気道癌,肺癌,消化管癌などの原因であるとの成績を得ている。同氏に喫煙と癌の因果関係について聞いた。

女子の腺癌は間接喫煙が原因

 紙巻きたばこには,両切りたばことフィルター付きたばこがある。わが国では,1960年に「ハイライト」が発売されて以来,フィルター付き巻きたばこが流行している。これらのたばこと肺癌の関係について,野口氏は次のように考察する。
 両切りたばこの場合には粗大粒子が肺門部領域に着床しやすく,扁平上皮癌ができやすい傾向があり,フィルター付きたばこの場合にはフィルターが粗大粒子をカットし,微細粒子が選択的に肺内に吸引されて,腺癌ができやすくなると考えられる。一方,たばこの種類に関係なく,毒性のより強い副流煙の間接喫煙は経鼻吸引で,粗大粒子が鼻腔内に着床し,フィルター付きたばこの場合と同様に微細粒子が選択されて肺内に吸引され,腺癌ができやすくなると考えられる。
 扁平上皮癌の主たる原因は主流煙の経口吸引であり,両切りたばこでできやすかったと考えられる。腺癌の主たる原因はフィルター付きたばこの経口喫煙とフィルターの有無に無関係な間接経鼻喫煙と考えられる。直接・間接いずれの場合も,微細粒子が肺の末梢領域に到達着床し,そこで腺癌をつくると考えるのが合理的である。
 野口氏は,同科における1985~97年の肺癌症例の男女別組織型分類を検討したところ,男子では腺癌が次第に増加し,扁平上皮癌を上回るようになり,女子でも約 6 割が腺癌で占められていた。
 同様に,米メイヨークリニックにおける両切りたばこの時代とフィルター付きたばこの時代の肺癌症例の男女別組織型分類を検討した結果,両切りたばこの時代は男子では扁平上皮癌が最も多くを占め,フィルター付きたばこの時代は男子では腺癌の割合が増加していた。女子の場合には,いずれの時代でも腺癌の割合が最も多くを占めた。
 同氏は「男子の腺癌の増加は,フィルター付きたばこの流行が原因と考えられ,女子で腺癌が多いのは,間接喫煙のためと考えられる」と主張する。
 同科における1985~97年の肺癌症例の男女別組織型別喫煙歴を検討した結果,腺癌の発症は禁煙10年で激減するが,禁煙25年まで続いた(表)。同氏は「癌の潜伏期間が20~30年と言われていることと符合する」と考える。
 腺癌症例の男女別累積年齢分布を検討したところ,女子では47歳から80歳までの分布で,男子の分布より有意に若かった。同氏は「女子の濃厚な発癌物質の曝露が示唆された。すなわち,癌の潜伏期間を平均25年とすると,22歳以降に濃厚な発癌物質の曝露を受け続けていることになる。これは,女子の結婚年齢以降におおむね重なり,狭い家庭内での副流煙の濃厚な曝露が主たる原因と考えて矛盾しない」と見る。

喫煙粒子の体内動態を反映

 次に,喫煙歴が調査されている肺機能検査症例延べ 1 万8,272例から癌の確定診断が得られた 1 万1,022例を抽出した。男子喫煙率は91.0%,女子喫煙率は23.5%であった。
 これらの症例から,女子胃癌および肺癌症例の累積年齢分布を見ると,喫煙者では胃癌患者のほうが肺癌患者よりも若く,非喫煙者では差がなかった。 野口氏は「女子の深く吸い込まない喫煙は,口のなかに喫煙粒子を長くとどめておくことを意味する。口内着床量が増えることから,嚥下量の増加が見込まれる。その結果,消化管癌,特に胃癌にその影響が顕著に現れるのではないか。近年,男子で胃癌と肺癌の死亡数が逆転したのはフィルター付きたばこが流行し,嚥下粒子量が減少したためであろう」と推測する。
 癌登録データベースの入院登録症例延べ 5 万356例から癌患者 2 万145例を抽出し,喫煙粒子の曝露形態別に見ると,喫煙粒子の体内動態を反映する成績が得られた(図)。 「気道における粒子の移動は線毛運動によるもので,上気道癌と下気道癌,すなわち肺癌の症例数の差は,主として重力の掛かり方の差と考えられる。消化管癌は,上気道着床粒子の嚥下と下気道着床粒子の嚥下の二度にわたる消化管通過の結果と推定される。主として消化管から吸収された喫煙粒子成分は,肝臓および腎臓から排泄され,その間に体内の各臓器に分布することになる。血流を介して分布する臓器の曝露濃度は低く,臓器ごとに感受性の差があると考えられる」と説明する。
 同氏は,消化管癌の頻度は喫煙粒子の曝露濃度に比例し,通過速度に反比例すると考え,その曝露濃度をアンピシリンの濃度測定データを元に推定した。アンピシリン500mgを生理食塩液10mgに溶解して超音波ネブライザーで吸入すると,その 4 時間後の尿中濃度は0.28mg/mlとなる。喀痰中濃度は12mg/mlだったので,喀出されずに嚥下される濃度は比較的高い濃度と考えられる。
 この成績を元に,消化管各部位の曝露濃度を推定し,その通過速度を食物通過時間と消化管の長さから算出した。そして,患者数と曝露指数(曝露濃度÷通過速度)との間の相関を見ると,男女ともに有意な相関を認めた。このことから「消化管癌は男子では主として直接喫煙,女子では主として間接喫煙が原因と考えて矛盾がない」と見る。

喫煙粒子中の植物タールが原因

 以上の結果から,野口氏は「癌の主たる原因は,直接喫煙もしくは間接喫煙であると考えられる。すなわち,一元論である」と主張する。
 喫煙粒子中に含まれる発癌物質としては,ベンツピレンなどが知られている。同氏は,ベンツピレンなどを含む植物タールに注目している。「わが国のコールタール発癌実験などによって,コールタールが癌の原因であることが実験的に証明されている。コールタールは,古代の植物が地殻変動で地中に埋没して炭化してできた石炭が原料である。タバコのタールと同じく植物タールとみなすことができる」と解釈する。
 この発癌論は,ドイツの医学者,ロベルト・コッホが唱えた,(1)ある病気からいつも病原体が分離される(2)分離培養できる(3)それを人に返せば同じ病気を起こしうる─の 3 原則に適合すると考えている。すなわち,(1)については,癌の原因として直接および間接喫煙(植物タール)が指摘されている,(2)については,喫煙粒子中のタールは,ベンツピレンなどの発癌物質を含んでいる,(3)については,タールで癌ができる,癌患者数の分布が喫煙粒子の体内分布およびその動態を反映する─点を挙げている。
 最後に,同氏は,喫煙による癌の罹患率について,次のように試算している。
「肺癌になる確率は男子喫煙者の約 8 %,女子喫煙者の約 4 %であり,肺癌を含めどこかの癌になる確率は男子喫煙者の約40%,女子喫煙者の約67%と考えられる。夫が喫煙者で妻が非喫煙者の場合,妻が癌になる確率は約67%はあるのではないかと推測される」

 

7, マクロファージ・エラスターゼが関与か 喫煙の肺気腫誘発メカニズム
メディカルトリビューン 17 Dec 1997
ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)内科・細胞生物学のSteven D. Shapiro准教授らは『Science』(277:2002-2004)で「肺気腫の発生機序における喫煙の役割について新しい識見を得た」と発表。「たばこの煙に曝露すると,それに呼応して肺のマクロファージがマクロファージ・エラスターゼという酵素を産生,これがさらに多くのマクロファージを肺に集めて宿主の炎症反応を制御する。この過程で生体内では過剰なマクロファージ・エラスターゼが産生され,その結果,本来この酵素が保護するはずの肺組織が破壊される」と説明している。

マウス実験で違いを確認

 今回の試験で同准教授らは,マクロファージ・エラスターゼ遺伝子欠損のノックアウトマウス群と同酵素が正常なマウス群とを設定し,1 日 2 回,週 6 回のペースで 6 か月間,たばこの煙に曝露させた。その結果,野性型マウス群では肺気腫の兆候が発現し,肺胞マクロファージの増加が認められたが,ノックアウトマウス群では肺へのダメージは認められなかった。
 こうした所見は,ノックアウトマウス群に単球特異的遊走活性のあるMCP-1を投与し,マクロファージを活性化しても引き続き認められた。
 エラスターゼの肺気腫発症への関与が疑われ出してから久しいが,これまでの研究では好中球のエラスターゼに焦点が絞られてきた。しかし同准教授らは,喫煙者の肺に存在する炎症細胞の90%以上を占めるのはマクロファージなのだから,好中球エラスターゼよりもマクロファージ・エラスターゼのほうが肺気腫発症に重要な役割を果たしていそうだと考えた。
 同准教授らは「今回の知見が,最終的には,肺気腫の病態進行を食い止めるような新しい治療法の開発に結び付くのではないか」と期待を寄せている。
 マクロファージ・エラスターゼは蛋白分解酵素に分類される酵素であり,既に薬学の研究者たちは,変形性関節症や癌に関与するある種の蛋白分解酵素を阻害する試薬の開発に成功していることから,同准教授は「製薬企業でも,肺気腫治療薬となるマクロファージ・エラスターゼ阻害薬の設計に必要な基本的薬理動態を把握しているはずだ」と述べている。
 しかし,マクロファージ・エラスターゼの研究が,肺気腫の治療法確立にすぐに結び付くわけではない。
 ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)肺・クリティカルケア部門の肺専門家,Michael Keane博士は「今回の知見は興味あるものだ」と評価しながらも,「この研究結果に基づく治療法では,肺気腫病変の進行を止めるだけで,既に存在している肺気腫を治癒させることはできない」と指摘している。

 

8,発癌物質感受性で肺癌のリスクを予測  メディカルトリビューン 14 Dec 1998
テキサス大学M Dアンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)のXifeng Wu博士は,『Cancer』(83:1118-1127)に「たばこに含まれる化学物質により,遺伝的に肺癌発症のリスクが高い喫煙者を同定することができるかもしれない」と発表。「たばこに含まれる主要発癌物質,ベンゾ[a]ピレンジオールエポキシド(BPDE)に感受性のある喫煙者は,特に肺癌を発症しやすいかもしれない」と述べている。

BPDE感受性で リスクは7.26倍

 Wu博士らは,新たに肺癌と診断された患者57例と対照者82例でBPDE感受性を比較。その結果,BPDEに対する感受性は,癌患者では69%に認められたのに対し,対照群では22%であった。また,変異誘発物質であるブレオマイシンと肺癌のリスクとの関係が報告されているが,今回の試験の被験者のうち64%が,ブレオマイシン感受性であった。
 同博士は,培養条件下で白血球をBPDE処理した後,染色体の損傷を測定して被験者の感受性を評価。「BPDEが誘発する染色体の切断がBPDE感受性を示し,したがって,肺癌が発症しやすいことを表す」と説明している。さらに「BP DE感受性試験では,24時間が至適処理時間である」としている。
 癌患者では,1 細胞当たりの平均染色体切断数は0.78であったが,対照群では0.46であった。細胞当たりの染色体切断数は,BP DEの濃度に比例して上昇した。
 最終的に,年齢,性別,喫煙量(パッケージ数×喫煙年数)およびブレオマイシン感受性で補正したところ,BPDE感受性の患者は,肺癌発症のリスクが7.26倍高いことが明らかになった。
 同博士は「これら喫煙者のBPDE感受性による判別は,癌のリスクに対する生物学的危険信号としての役割を果たす。BPDE感受性試験とともに,他の発癌物質に対する感受性試験を並行して行えば,さらに正確に高リスクの患者を同定できるかもしれない」と述べた。
 アラバマ大学(アラバマ州バーミングハム)総合癌センターの分子遺伝学者,Ron Acton博士は「生活様式だけに注目するより,遺伝的リスクに注意を集中することは,いつの場合にも重要だ」と評価。「患者に遺伝的リスクファクターがあると忠告できれば,患者の受け取り方が違う。予防や治療のコンプライアンスが増す」と述べた。

ライトスモーカーに感受性

 テキサス大学MDアンダーソン癌センターのRobert Chamberlain博士は「リスクが低い比較的喫煙量の少ない喫煙者が肺癌になる一方で,ヘビースモーカーなのに肺癌を発症しない例も見られるが,今回の研究は,その理由を明らかにするのに役立つかもしれない」と述べた。
 今回の試験では,1 日の喫煙本数が22本未満の喫煙者をライトスモーカーと定義しているが,ライトスモーカーのほうが,発癌物質感受性を呈する傾向が高かった。
 同博士は「最終目的は,環境中に存在し,生体に変化をもたらす可能性のあるさまざまな攻撃因子に対する感受性を持つ人々を同定することだ」と述べた。
 Wu博士は「こうした目標に向けた次のステップは,BPDEが誘発する染色体損傷の機序を明らかにすることだ。種々の変異誘発物質の作用機序はさまざまに異なるため,それぞれが異なるDNA修復過程を活性化し,異なった癌感受性を引き起こしているのかもしれない」と説明した。

 

9, 成人にも有害な受動喫煙
メディカルトリビューン 2001年10月25日 (VOL.34 NO.43) p.02

喘息,COPD,肺癌などのリスク高める

 受動喫煙は小児喘息の原因となることが知られているが,第11回肺疾患学会(欧州呼吸器学会主催)では, 今までの研究では不確定とされていた成人喘息や,重篤な呼吸器疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD), 肺癌などのリスクを高めることを明確にする疫学研究が多数発表された。

女性は影響を受けやすい

 フィンランド国立職業保健研究所(フィンランド・ヘルシンキ)のMaritta Jaakola博士は,受動喫煙の成人喘息 などへの影響を証明するデータを紹介した。 同博士らは,南フィンランドに住む718例の非喫煙者を調べた。そのうち231例は過去 2 年半以内に喘息と診断 された患者,残り487例を対照群とした。職場でたばこの煙に曝露されている人は,そうでない人より喘息発症リスクが 2.16倍高く,また配偶者が喫煙する場合,そのリスクは4.77倍になることが判明した。 同博士は「この研究結果は成人喘息の発症に受動喫煙が影響していることを明確に証明している」と述べた。
 他の研究でも,喫煙者は男性が多いためか,女性は受動喫煙によるリスクにさらされているという。 臨床生理学研究所(伊ピサ)のSandra Balducci博士らがイタリア各地の非喫煙者女性2,335例を調査したところ, 47%が前の週に受動喫煙にさらされたと答えた。 これまでの受動喫煙の63%は家庭で,43%が職場でのものだという。 同博士によると,夫が喫煙者の場合は呼吸困難やCOPDに罹患している率が1.4~1.6倍高く,職場での受動 喫煙はそのリスクを倍増させる。 また,家庭と職場の両方で受動喫煙にさらされている場合はそうでない女性に比べて,これらの疾患リスクは 2.8~4.2倍高いことが明らかになった。
 放射線衛生研究所(独ミュンヘン)のMichaela Kreuzer博士とGSF疫学研究所(ミュンヘン)のH. Erich Wichmann博士は,女性肺癌患者の20~30%を占めると言われている非喫煙者234例と生涯に400本以下の 喫煙女性535例とを比較検討した。
 その結果,職場での受動喫煙は間違いなく肺癌のリスクファクターであることが明らかになった。 一方,夫の喫煙と肺癌発症との相関性についてはそれほど明確ではない。 夫により 7 万6,000時間以上受動喫煙にさらされている女性の肺癌リスクは1.67倍上昇し,職場で 4 万時間以上 受動喫煙にさらされている女性のリスクは2.67倍上昇していた。

地域により被害程度に差

 同学会では欧州16か国36施設での調査をまとめた欧州共同体呼吸器保健調査の結果も初めて報告され, 受動喫煙についての調査結果がウプサラ大学生物工学センター(スウェーデン・ウプサラ)のChrister Janssen 博士により紹介された。 36施設のうち12施設では被験者の半数が日常的に受動喫煙に曝露されていたが,地域による差が大きく, ウプサラではわずか 2 %であるのに対し,スペインのガルダカオでは54%であった。
 受動喫煙者は,労作性呼吸困難や過剰な気管支反応などの症状を有するものが多く,同博士は「特に職場 などの環境からたばこの煙を減少させることが呼吸器の健康増進につながるだろう」と結論している。

 

10, 禁煙後に出現する気道症状
メディカルトリビューン 2001年3月22,29日 (VOL.34 NO.12,13) p.41

ニコチンがC線維を抑制

禁煙後に気道症状の増加を認めることがしばしばあるが,この現象はニコチンが下気道における 知覚神経系のC線維を抑制あるいは遮断していることで説明できそうだ。

喫煙群では咳嗽回数が少ない

 こうした可能性に注目したのは,喫煙者におけるカプサイシンの咳嗽感受性に関する研究を 行っていた,イエーテボリ大学ザールグレンスカ病院(スウェーデン・イエーテボリ)アレルギー科の E. Millqvist氏らの研究グループ。 同氏は「今回の研究の結果,ニコチンがこれらのC線維を抑制あるいは遮断しているという仮説を 裏づけるデータが得られた」とRespiratory Medicine(95:19-21)で報告した。
 カプサイシン誘発試験は,呼吸器症状のなかでも最も高頻度である咳嗽に対する治療成績を評価 するのに用いられてきた。 しかし,同氏らによると,まだ方法論上考慮すべき点が残されており,完全な理解には至っていない。
 カプサイシンは,咳を引き起こす知覚神経系の無髄線維であるC線維を刺激することは既に知られている。 同時に,喫煙もまた咳嗽や喀痰といった呼吸器症状をしばしば引き起こす。
 そこで同氏らは,自覚的に健康である喫煙者と非喫煙者の両者にカプサイシンを投与して,喫煙が カプサイシン誘発に与える影響について検討した。 カプサイシン投与量を徐々に増やして,誘発された咳嗽の回数を数えるとともに,下気道への刺激を 症状スコアを用いて数値化した。
 その結果,非喫煙群に比べて喫煙群では,誘発される咳嗽回数が有意に少ないことが明らかになった。 しかし,他の症状に関しては両群間で差は認められなかった。
 同氏らは「今回の知見は,喫煙者が禁煙後に経験する気道症状の増加を説明するのに役立つかもしれない」と期待している。

 

11,  The accumulated evidence on lung cancer and environmental tobacco smoke

BMJ 1997;315:980-988 (18 October)
A K Hackshaw, lecturer,a M R Law, reader,a N J Wald, professor a 

a Department of Environmental and Preventive Medicine, Wolfson Institute of Preventive Medicine, St Bartholomew’s and Royal London School of Medicine and Dentistry, London EC1M 6BQ

【OBJECTIVE】 To estimate the risk of lung cancer in lifelong non-smokers exposed to environmental tobacco smoke.

【DESIGN】 Analysis of 37 published epidemiological studies of the risk of lung cancer (4626 cases) in non-smokers who did and did not live with a smoker. The risk estimate was compared with that from linear extrapolation of the risk in smokers using seven studies of biochemical markers of tobacco smoke intake.

【MAIN OUTCOME MEASURES】 Relative risk of lung cancer in lifelong non-smokers according to whether the spouse currently smoked or had never smoked.

【RESULTS】 The excess risk of lung cancer was 24% (95% confidence interval 13% to 36%) in non-smokers who lived with a smoker (P<0.001). Adjustment for the effects of bias (positive and negative) and dietary confounding had little overall effect; the adjusted excess risk was 26% (7% to 47%). The dose-response relation of the risk of lung cancer with both the number of cigarettes smoked by the spouse and the duration of exposure was significant. The excess risk derived by linear extrapolation from that in smokers was 19%, similar to the direct estimate of 26%.

【CONCLUSION】 The epidemiological and biochemical evidence on exposure to environmental tobacco smoke, with the supporting evidence of tobacco specific carcinogens in the blood and urine of non-smokers exposed to environmental tobacco smoke, provides compelling confirmation that breathing other people’s tobacco smoke is a cause of lung cancer.

Key messages
・A woman who has never smoked has an estimated 24% greater risk of lung cancer if she lives with a smoker
・Neither bias nor confounding accounted for the association
・There is a dose-response relation between a non-smoker’s risk of lung cancer and the number of cigarettes and years of exposure to the smoker
・The increased risk was consistent with that expected from extrapolation of the risk in smokers using biochemical markers
・Tobacco specific carcinogens are found in the blood and urine of non-smokers exposed to environmental tobacco smoke
・All the available evidence confirms that exposure to environmental tobacco smoke causes lung cancer

 

12, Reanalysis of epidemiological evidence on lung cancer and passive smoking

BMJ 2000;320:417-418 ( 12 February )

J B Copas, professor, J Q Shi, research fellow. Department of Statistics, University of Warwick, Coventry CV4 7AL

【OBJECTIVE】 To assess the epidemiological evidence for an increase in the risk of lung cancer resulting from exposure to environmental tobacco smoke.

【DESIGN】 Reanalysis of 37 published epidemiological studies previously included in a meta-analysis allowing for the possibility of publication bias.

【MAIN OUTCOME MEASURES】 Relative risk of lung cancer among female lifelong non-smokers, according to whether her partner was a current smoker or a lifelong non-smoker.

【RESULTS】 If it is assumed that all studies that have ever been carried out are included, or that those selected for review are truly representative of all such studies, then the estimated excess risk of lung cancer is 24%, as previously reported (95% confidence interval 13% to 36%, P<0.001). However, a significant correlation between study outcome and study size suggests the presence of publication bias. Adjustment for such bias implies that the risk has been overestimated. For example, if only 60% of studies have been included, the estimate of excess risk falls from 24% to 15%.

【CONCLUSION】 A modest degree of publication bias leads to a substantial reduction in the relative risk and to a weaker level of significance, suggesting that the published estimate of the increased risk of lung cancer associated with environmental tobacco smoke needs to be interpreted with caution.

Key messages
・A systematic review of epidemiological studies on passive smoking estimated the increased risk of lung cancer as 24%
・There is clear evidence of publication bias in these studies
・Reanalysis of the data allowing for the possibility of publication bias substantially lowers the estimate of relative risk

 

13,  喫煙本数を減らすだけでは不十分 完全な禁煙のみが肺に利点
  メディカルトリビューン 2003年3月27日 (VOL.36 NO.13) p.10

コペンハーゲン大学病院のN. S. Godtfredsen氏らは「計約 2 万例の被験者を対象に平均14年間実施された 3 件の大規模コホート試験のデータを分析した結果,入院治療を必要とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが禁煙により約40%低下することが明らかになった」とThorax(2002; 57: 967-972)に発表した。
 今回の研究では,試験期間を通して大量喫煙( 1 日15本以上)群と,喫煙量を50%以上減らした群,完全に禁煙した群とで,COPDによる入院頻度を比較した。その結果,元ヘビースモーカーも,完全禁煙群ではCOPDによる入院回数が有意に減少したが,喫煙本数を半減させた群では好ましい影響は確認されなかった。