日本禁煙推進医師歯科医師連盟では、学術発表と会員の情報交換の場として年1回学術総会 を開催しております。皆様のご参加をお待ちしております。日時等は改めてお知らせ致します。




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代謝・内分泌・血液疾患

 

1, 喫煙が2型糖尿病の新たな危険因子に   メディカルトリビューン[2000年4月6日 (VOL.33 NO.14) p.39]
喫煙習慣が癌や冠動脈疾患の危険因子であることはよく知られているが,2 型糖尿病との関連については,これまで明らかにされていなかった。大阪ガス健康推進チーム(代表研究者=大阪ガス健康管理センター・岡田邦夫氏)では,大阪市立大学第 2 内科の津村圭氏,同環境衛生学の林朝茂氏の協力のもと,進行中のコホート調査「The Osaka Health Survey」の結果を元に,日本人成人男性における 2 型糖尿病と喫煙習慣の関連について解析,喫煙習慣が 2 型糖尿病発症の危険因子であることを明らかにした。

6,250人のコホートを解析

 The Osaka Health Surveyは,大阪ガス(株)の男性従業員(35歳以上)を対象に,高血圧,糖尿病などの慢性疾患の危険因子を明らかにすることを目的とした進行中のコホート調査である。同調査は,会社が実施する健康診断と生活習慣調査のアンケートを含む詳細な質問票により構成されている。
 今回の対象は1981~91年に登録され,登録時に糖尿病,耐糖能異常,高血圧のない35~60歳の男性6,250人。観察期間は 5 ~16年で,登録開始時の喫煙習慣に基づいて,登録開始時に喫煙歴がないと答えた1,302人(非喫煙群)・過去に喫煙歴がある1,068人(禁煙群)・登録開始時に喫煙していると答えた3,880人(喫煙群)-の 3 群に分類した。
 この 3 群に基づいて,喫煙習慣が 2 型糖尿病の発症に及ぼす影響を前向きコホート研究にて検討。多変量解析はCox比例ハザードモデルにて行い,年齢,body mass index(BMI),運動習慣,アルコール摂取量,糖尿病の家族歴,空腹時血糖値(FPG),総コレステロール,中性脂肪,HDLコレステロールなどの補正を行っている。なお,糖尿病の発症率の計算には人年法を用い,糖尿病の診断は現行の診断基準に基づきFPG 126mg/dl以上,または経口糖負荷試験(OGTT) 2 時間値200mg/dl以上とした。 過去の喫煙量に応じリスク上昇
  5 ~16年の観察期間中(総人年 6 万904)に450人が 2 型糖尿病を発症。喫煙習慣別の発症率( 1 万人年当たりの発症率:1 万人を 1 年間観察した際の発症率)は,非喫煙群が60人,禁煙群が67人,喫煙群が81人で,非喫煙群を対照とした場合の多変量補正後の相対危険度は,禁煙群が1.10(0.79~1.53),喫煙群が1.47(1.14~1.92)と喫煙によるリスクの上昇が認められた。
 同様に,1 日の喫煙本数別に多変量補正後の相対危険度を見ると,1 ~20本では1.40(1.05~1.86),21~30本では1.40(1.02~1.93),30本以上では1.73(1.20~2.48)であった。
 さらに「過去の喫煙の習慣性」による 2 型糖尿病発症リスクをPack-Yearという方法を用いて計算した。これは「 1 日の喫煙本数/20本」×「喫煙年数」で,1 日の喫煙本数が20本,喫煙年数が 1 ならPack-Yearは 1 となる。その結果,Pack-Yearが 0 の場合(非喫煙群),2 型糖尿病の発症率( 1 万人年当たり)は60人,0.1~20.0では61人,20.1~30.0では92人,30.1~40.0では88人,40.1以上では109人であり,非喫煙群を対照とした場合の多変量補正後の相対危険度は,Pack-Year 0.1~20.0では1.22(0.89~1.67),20.1~30.0では1.57(1.16~2.11),30.1~40.0では1.55(1.06~2.26),40.1以上では,1.73(1.15~2.60)であった(図)。
 これらの結果から,岡田氏は「喫煙自体が 2 型糖尿病のリスクの増加と関連があることが明らかになった。また,1 日の喫煙本数が増えるほど,また,過去の喫煙量が増えるほど,糖尿病発症の危険度が高まることも確認された」と結論した。
 また,岡田氏は「今後,2 型糖尿病は患者数がますます増加していくことが予想される。そこで,どのようなライフスタイルが 2 型糖尿病の危険因子と関係するかを検討することは,2 型糖尿病の一次予防においてきわめて重要と考えられる。今回,喫煙が糖尿病発症の独立因子となる結果が得られたことは,生活習慣改善が重要であることを示したと言える」とも述べている。

 

2, 喫煙はインスリン感受性を低下   メディカルトリビューン[2001年1月4日 (VOL.34 NO.01) p.01]  

国立シンガポール大学で実施された研究によると,健康な中国人青年であっても,喫煙はインスリン感受性を顕著に低下させるという。当地で開催された第2回香港糖尿病と心血管疾患のリスクファクターに関するシンポジウムで,同大学臨床研究センターのStephen D. Wise助教授は,糖尿病に罹患していない非喫煙者,または1日1箱以下の喫煙者を対象にした現在進行中の研究について報告した。

インスリン作用発現が遅延

 Wise助教授らは,8 例の非喫煙者と 1 日平均15本のたばこを吸う同数の喫煙者を比較した。両群の年齢(平均23歳),BMI(body mass index,22.6kg/m2)と身体トレーニングレベルは一致させた。同助教授は「喫煙者ではトリグリセライド値が比較的高かったが,ベースラインでの全対象者の血漿脂質は正常範囲内であった。対象者は全例スリムで健康な若者で,徴兵のためのトレーニングとしてシンガポールでフィットネス活動に参加していた」と述べた。
 一晩(10時間以上)の絶食後,12 IUのインスリンを皮下投与(必要に応じてブドウ糖を注射)し,2 回の検査を行った。喫煙群には,10時間の拘束の間,1 時間に 1 本の割合でたばこを吸わせた。
 非喫煙群のインスリン作用発現時間の中央値が25分であったのに対し,喫煙群では40分ときわめて遅かった。また,喫煙群では非喫煙群に比べてブドウ糖最高注入率は37%低く,総ブドウ糖注入率は26%低かった。
 同博士は「喫煙者ではインスリンクリアランス値の低下とインスリン抵抗性が現れていることが示唆された」と述べ,ブドウ糖の吸収率の低下は,末梢組織灌流に影響する血管抵抗の増加によるものと推測している。
 さらに,同助教授は「たとえ壮健な若い中国人男性でも,喫煙による代謝への影響は甚大である。同様のプロセスは,肝臓のインスリンクリアランスに影響し,喫煙者はインスリンの曝露を大きく受けると考えるのが妥当ではないか」と述べた。

 

3, Passive smoking in the home: plasma cotinine concentrations in non-smokers with smoking partners

Tob Control 2001;10:368-374 ( Winter ) FULL TEXT

Martin J Jarvisa, Colin Feyerabendb, Andrew Bryantb, Barry Hedgesc, Paola Primatestaa

a ICRF Health Behaviour Unit, Department of Epidemiology and Public Health, University College London, London, UK,
b Medical Toxicology Unit, New Cross Hospital, London, c National Centre for Social Research, London

 

【BACKGROUND】 Risks of lung cancer and of heart disease attributable to passive smoking have been evaluated mainly in non-smokers married to smokers, but there has been little quantitative assessment of the extent of exposure in marriage partners as indicated by markers of inhaled smoke dose.

【OBJECTIVE】 To relate plasma cotinine concentrations in non-smoking English adults to the smoking behaviour of their partners and to demographic and other factors.

【DATA】 Population survey. Data from two years (1994 and 1996) of the Health Survey for England.

【MAIN OUTCOME MEASURES】 Plasma cotinine concentrations in non-smoking adults married to or cohabiting with a partner.

【RESULTS】 There was a strong dose-response relation between cotinine concentrations in non-smoking adults and the smoking behaviour of their partners, rising from a geometric mean of 0.31 ng/ml in those with non-smoking partners to 1.99 ng/ml in those whose partners smoked 30 or more cigarettes per day. In addition, exposure was greater in men, in the autumn and winter, and in those living in more disadvantaged circumstances, and there was an increasing gradient of exposure from the south to the north of the country. On average, cotinine concentrations in non-smokers with a smoking partner were 0.6-0.7% of those in cigarette smokers.

【CONCLUSIONS】 If cotinine is taken as a measure of risk relevant dose, the implied increase in risk of lung cancer in non-smokers with smoking partners is consistent with the risk observed in epidemiological studies. Smoking by partners in the home is a major source of non-smoking adults’ exposure to passive smoking. (Tobacco Control 2001;10:368-374)

 

Keywords:passive smoking; non-smoking partners; cotinine

 

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